2007年08月04日

実用的ソフトの不具合発生リスク

任天堂ホームページにて,『がんばる私の家計ダイアリー』と『FOREVER BLUE
』の不具合が相次いで発表されているが,不具合が多く発生していることを咎めようとも思わない。早期に不具合の公表を進めている結果であるとも言えるわけだし,ゲームのバグが容認されていた時代とは異なって,昔ならば問題とされずとも現在なら問題となるケースが増加していることも確かだからだ。

だが特に注目してもらいたいのは,商品交換時『〜家計ダイアリー』はデータの引き継ぎが行われず,『FOREVER BLUE』もまだ不透明な状態。そしてもっと言えば,『〜家計ダイアリー』というソフトはゲームではなくて実用ソフトである。実用ソフトにおいては個人的なデータの蓄積もコンテンツの一部と捉えるべきだと思われるが,そのデータが引き継げないのはなかなか重大な問題だ。もちろん不具合のあるバージョンのソフトと新品の交換になるから,発売当時から現在までのデータをバックアップしたい場合はどうすればいいのかということになる。

ゲームは所詮ゲームだ。だが,実用的なものとなると話は別になってくる。期待されることがまるで違うのだ。例えばワードやエクセルに不具合があり,過去のデータを継承できないとすれば社会にどれだけ大きな問題が発生するだろうか?ゲームメーカーが娯楽以外へ参入することは,そういったリスクを孕んでいるということを改めて認識させられた。

それを踏まえた上で,構造的にどんな問題があるだろうか?前述のワードやエクセルは,記憶メディア(HDD)とアプリケーション(Word,Excel),ハード(PC)が分離されているため,アプリケーションだけを修復することが可能だ。したがって,インターネットを通じて直接アプリケーションを書き換えることもできる。Wiiも基本的にはこの形式をとっているが,アプリケーションはDVDメディア上から起動する方式(インストールしない)のため,アプリケーションをネットワークから書き換えることができない点では相違がある。

一番問題なのはDSで,DSの場合アプリケーションカートリッジ上に記憶メディアを載せているためアプリケーション単独での修復が不可能だ(色んな意味で)。もちろんこの方式にはメリットもある。カートリッジを持ち運べばデータを持ち運んでいることと同義だから,例えばPCのデータを運ぶ際は,いちいちモバイルメディアに移す作業が必要だがそれがない。だから他のDS上で簡単に状況を再現することが可能になっている。一方で先ほども述べたようにデータを分離させることができず,不具合時の交換にデータ移行を実現できない問題がある。これがゲームならやり直せばいい,で済んだかも知れないが,家計簿などの実用データであればそうもいかない。

この問題解決のためにどんな手段をとればいいだろうか。まず一点目として,物理的にデータを分離していなくとも,設計上データを分離させておき,アプリケーションの変化に対応できる構造を組むことだ。商品交換時にも「データ移行不可能」ということを言わずに,簡単にデータを引き継げるようサービス体勢を整えることも必要になる。

二点目として,DSのデータをフラッシュメモリなどに一時的に待避させられる商品を発売することだ。データ引き継ぎをユーザー側で単純に行えるような仕組みづくりがあればメーカー側にも負担が小さいし,ユーザーにとっても大きな問題にはならない。

三点目は非現実的かも知れないが,DSのカートリッジを書き換え可能なメディアに変えてしまうことだ。これによりインターネットを通じたアプリケーションの修復が可能となる。フラッシュメモリの価格も大きく下がったので不可能ではないだろう。このためにはDSの構造自体を変える必要もあるので次世代のDSで実現できると嬉しいのだが。

もちろんデバッグの方法を見直すことも必要だろう。特に今回の電卓のケースでは,通常電卓がはじき出した答えを鵜呑みにしてしまいやすいであろうし,デバッガーも例外でないように思われる。いずれにせよ,データを扱う実用ソフトが今後も発売されるというならば,それなりの対応は検討課題になる。ゲームソフトとはいえ,購入者はそれを間違いなく参考にするのだから,このようなバグのために,DSで何かを始めようとしたユーザーが,データを引き継げないリスクを懸念してモチベーションが下がることだけは回避して欲しいものである。

任天堂ホームページ
「がんばる私の家計ダイアリー」の不具合について
「FOREVER BLUE」の不具合についてのおしらせ

がんばる私の家計ダイアリー
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2007年05月02日

試行錯誤から早く次の段階へ

決算説明会の質疑応答から少しずつ。
http://www.nintendo.co.jp/ir/library/events/070427qa/index.html


※以下のQ及びAの内容は必要な部分のみ抜き出した上でさらに要約してあるため,
正確な内容や文面については必ず上記ページにてご確認いただくようお願いします。


Q2,DS向けタイトルの増加について,単純にマーケットの拡大と考えるか縮小要因となると考えるのか。という質問。
A,増えることは喜ばしいが,ただ喜んでいられない。お客様の有限のアテンションの中から,どのように必要なものをお知らせするか,期待を裏切らないようにするか,今後の重点課題として取り組まなければならない。

煮え切らない答えに感じたのだが,この質問は非常に重要な質問だと思う。64時代に少数精鋭を掲げて,失敗した経緯があるが,岩田社長に代わってからは,再度,ソフトメーカーとの関係拡大が目標であったわけであり,しかも一気にそれが実現した今となっては,その選定が今一度重点課題になってきたことは間違いない。

私は近頃感じているのだが,スーパーペーパーマリオのエントリー
でも書いたと思うが,任天堂内で開発されるゲームに関しては高い水準を保っているけれども,他社開発のコンテンツを受け入れる際にその審査に関して水準が下がってしまっているのではないか。セカンドパーティのゲームでもそう感じるのだから,サードパーティについてはなおのことだろう。その要因としては,岩田体制がソフトメーカーとの関係拡大をひとつの目的としてきたことと,社内のソフトタイトル数向上問題やWii及びDSにおけるネットワークインフラやオンラインコンテンツ(Wiiチャンネルの更新作業や各個別ゲームに対応した追加データ)などの副産物的作業により,開発者の本来的な開発以外の部分での作業が増加していることがあると考えている。

特に問題視したいのは,後者の副産物的作業である。ネットワークや追加データ等は任天堂が目指してきた夢のゲームの在り方ではあったが,一方でそれが実現してしまったことで,オンラインに対応させたいゲームが増えてくることにより,それぞれのゲームに追加データを供給しなければならなくなった。簡単にそれらのサービスを打ち切るわけにはいかないので,これは,ソフトが増えれば増えるほど増大していく問題だ。これはオンラインゲームを考える上での根本的な問題であるかもしれない。あるソフトに注力できるメーカーなどは良いだろう。例えばPC上でのオンラインゲームでは少数のゲームを長期的に運用することに注力しているから,コンテンツ数はコンシューマゲーム機市場ほどには増えてないし,その分サービスも飛躍的に増える心配はないと言えるが,任天堂の場合はそうではないだろう。特に質疑応答の中でもあったが,任天堂は従業員の数から言って決して大企業ではないので,人員をどうするのか,増やすとすれば収益が急速に減退したときにどうするのか,という問題にもぶち当たる。

Q6,アメリカ市場での戦い方について。
A,ブレインエイジが,ヨーロッパでは3万本にもかかわらず,アメリカでは1万本なのはなぜか,というコミュニケーションをしている。一方で,Wiiスポーツなどには手ごたえを感じている。

アメリカ市場のキラーコンテンツは「ブレインエイジ」ではなく,どう考えても「ヘルスパック」だと思うが。あとは「グリーンパック(環境対策ソフト)」があればなお良い。例えばペットボトルなどの再利用方法を詳しく解説した辞書タイプのコンテンツにし,それを実践したことで記録がつけられるようにし,そのことが地球の環境にどれだけ寄与したか,例えば南極の氷に影響したり,地球を表示させて森林が増えるなどのシミュレーションができるソフトを発売すれば,ゴア氏の推薦なんかもあって,クチコミや一般メディアを利用して販売本数を増やすことが可能だったりするかもしれないね。

Q12,DSのプラットフォームの寿命をどう考えているか。次世代ということも含めて中期的なビジョンを。
A,シングルアーキテクチャが社会のインフラとして役立つことができれば,例えば携帯電話のような台数のものがシングルアーキテクチャで動くことの有益性を考え,寿命を長くできるさまざまなチャレンジをする。

シングルアーキテクチャの普及拡大は,経済学では「ネットワーク外部性」というのだが,例えばWindowsを利用する者が周りに増えることによってファイル形式の非対応などといった問題が減り,Windows自体の効用(有用性)が上がることと同じで,確かに有益だ。

一方で,「独占」の問題をも考慮しなければならない。DSの普及が国民的なものとなり,娯楽だけでなく生活圏にも利用が及んでくるとすれば,そのアーキテクチャを一企業だけが生産し続けることには問題が生じる。実際のところそこまでいくとは私は考えてはいないが。というか,消費市場の自然的独占ならまだ良いが,SFC時代などに批判の矛先となった供給市場の人為的独占の再来には特に気をつけなくてはならない。

Q16,久多良木氏のヘッドハンティングの可能性について。
A,それはないのではないか。

いつも慎重というか無難なコメントをするのに,この可能性についてはほぼ断定的に否定したのがちょっと面白かったので取り上げてみた。

Q17,セカンドライフについてどう考えているか。
A,私個人はほとんど興味を持っていない。将来ものすごい存在になるとも思っていない。それは現代を生きる人間には時間やエネルギーが限られている。人間が何かをインプットしたことに対して,ご褒美があるのがゲームである。

これはやや聞き捨てならないと感じた。セカンドライフにはビジネス的にしろ,バーチャル的にしろ,なんらかのインプットに対するご褒美があることも間違いなく,そういう意味でセカンドライフはゲームと言えるのであり,岩田氏の言葉は必ずしもセカンドライフ=ゲームということを否定していないと言える。

だが,興味がない,と言っているのはゲームとして見ているが,任天堂の目指すものと違うので興味がない,というのが大筋で言いたいことだろう。つまりソニーのPSなどに対するいつものスタンスと同じである。

しかし,私はセカンドライフとどうぶつの森は,同じ類のゲームと考えている。もちろん貨幣の現金化など全く異質な面は持っているが,根本的にバーチャル世界での暮らしをすることでは共通しているし,バーチャルだからといって実在の人間とコミュニケーションをとることを目的としていることも共通している。セカンドライフの目標がどのへんにあるのか私は知らないが,任天堂がどうぶつの森とセカンドライフを比較し,その差異性や意味づけなどをしっかりと考えて欲しいとは思う。


別にまとめというわけでもないが,今回の質疑応答ではツッコんだ質問が多かったというようには感じた。DSの普及,Wiiのローンチという状態で,次の段階をどうするか,というもやもや感が,それだけ投資家にあったのではないかと思ったし,実際私はそう感じた。岩田氏の回答からは,試行錯誤の繰り返しがまだ続いているというように思われた。

以前に,任天堂は次の夢を見れるか
,というエントリーで書いたような,次の具体的なビジョンが見えない状態が今はある。それが今はいいが長く続くと,娯楽企業としては期待や消費者の注目を失ってしまう。やはり,人員的な企業規模に比べて,コンテンツが拡大しすぎてしまっているような感はある。ソフトを多く出すということではない意味においての回転率を上げることで,消費者をワクワクさせ続ける必要性が高まってきているのではないだろうか。
タグ:任天堂 決算
posted by Madick at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営・組織論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月08日

任天堂は次の夢を見れるか

Wiiは新しいゲーム機だと言っているけども,
半分はリモコンという新しい操作やチャンネルという新しい概念を取り入れたハードだが,
半分は任天堂が今まで描いていた理想をカタチにしたハードであり,既存のアイディアでもあった。

既存のアイディアとは,
ディスクライターやニンテンドウパワーで求めてきた,ゲームのダウンロード販売,
それに加えて,64DDで実現しようとしたファミコンソフトのダウンロード,
これらは「バーチャルコンソール」で実現した。
モバイルGBシステムなどで求めてきたオンライン対戦,これは「NintendoWi-Fiコネクション」で実現済みであり
モバイルGBシステム,サテラビュー,64DDでも求めてきた追加データの提供,
これは「WiiConnect24」で実現した。

任天堂が常に追い求めてきたオンラインビジネス,これらは時代を先取りしすぎた,と言われてきたが
ブロードバンド環境の普及,大容量フラッシュROMの低価格化など,技術革新と進歩によって
時代がそれに追いついた格好となったと言える。

これらは山内社長時代から受け継がれてきた思想を岩田社長が実現したとも言える。
私は,山内氏は先駆的,そして創造的なアイディアに長けた人物であり,
一方岩田氏は,それらを具現化する行動力に長けた人物だとみている。

2人ともそれぞれの長所を持った人間だが,
任天堂が今まで見てきた夢を現実のものとした今,
果たして岩田氏は,次の夢を見れるのだろうか。

岩田氏は,本当に任天堂がやりたかったことを非常にスマートに実現してきている。
そして,ゲーム人口の拡大のためにゲームをしなかった層を取り込むという
マーケティングに基づいた理論を展開し,それに適ったハードを作った。

環境は調った。

だが,娯楽は飽きられるもの。
山内氏も岩田氏もそう言う。

次に任天堂が飽きられないように何をするだろうか。
それどころか,Wiiに調えられたすばらしい環境を,本当に活かせる術を用意しているだろうか。

驚きはすぐに冷める。
新しい驚きを提供する次の夢を見れるかどうか
そこに命運がかかっている。
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2005年10月07日

任天堂のチャレンジ製品

チャレンジ精神の表現であるところのチャレンジ製品。
任天堂は数々のチャレンジ製品を発売してきた。
それは,異質な製品を世に出すことで,市場をもって実験を図る試みである。
今回,おそらく成功して軌道に乗せたと言って良いであろうニンテンドーDSも
インターフェースをスタイラスに持ち替えた,紛れもない実験的なチャレンジ製品であった。
しかし,数々のチャレンジの中で,ニンテンドーDSが成功を収めつつある理由はなんだろうか。
過去のチャレンジ製品群から検証してみたい。
なお,ここではあえて,一番売れたハードを基準にして時系列を組んでみた。
(チャレンジ製品は,特に異質だと思われる製品を取り上げています。→印は同時期ハード)

■ファミコン期 →PCエンジン,メガドライブなど
ファミリーベーシック
>FC用キーボード型インターフェースと簡単なプログラミングや音楽,計算ソフトのセット。
当時としては,ゲーム機=コンピュータだったので,当然の流れの発想だったが
プレイヤーにゲームを作らせるのは異質な発想と言える。

ロボット
>テレビから発せられる光を検出して実際にゲームに連動して動くロボット。
対応ソフトは2つのみだが,玩具とゲームの合成をなした異質な製品。

ディスクシステム
>FC用ディスクドライブ。契約店舗にディスクライターを設置,
書き換えによってソフトを安価にできる一方,
容量がROMよりも多いのが特徴。大容量への需要から,好調に。
後に大容量ROMが安価になったことにより,その役目を終える。

■スーパーファミコン期 →ネオジオなど
スーパースコープ,マウス
>SFC用周辺機器。スーパースコープは光線銃。それぞれ対応ソフト向けに発売。
マウスはそれなりに成功を収めたが,後続ソフトが続かず。
スーパースコープは,発売当時から評判が悪く,映画とタイアップするも共倒れ。

サテラビュー
>SFC用衛星データ放送対応アダプタ。有名人を起用したラジオ番組とゲームの組み合わせで
持続的なゲームの利用を目的として発売。スポンサーが少なかったこと,加入手続きなど
により滑り出しに失敗したこと,SFCの老年期であったことにより,
放送自体は何年か続いたが,途中で任天堂はスポンサーを降りている。

バーチャルボーイ
>単色立体視32bit機。世間が重厚長大の流れにあったこと,スタイルがかっこよくないこと,
ゲームの面白さが伝わりにくいなどの理由で,ソフトも少なく,すぐに引き上げられる。
横井軍平氏のアイディアハード。

■プレイステーション期 →セガサターン,ニンテンドウ64,3DO,ドリームキャストなど
ニンテンドウパワー
>SFC,GB向け書き換えシステム。ローソンの端末でソフトを書き換えて何度も使用できる。
当時過熱化していた中古問題の解決策として講じられた新しい流通スタイルだが,
もともとCD-ROMの時代でメディアが安価になっていたこと,書き換え自体は
店員が行うので時間がかかっていたことなどから,メリットを感じられず,
早々にサービス終了に追い込まれた。

64DD
>ネット接続可能な64用ディスクドライブ。運営自体を出資会社のランドネットDDに任せる。
ハード自体は完成していたものの,投入時期を逃したために,やむなくネット接続の
会員サービスとしてスタート。会員のコミュニティとして役立ったが
少数のソフトを発売しただけで,ディスクの良さをほとんど活かせず,
ランドネットDD社自体が終了。

モバイルシステムGB
>GB向けオンライン接続機器。プロバイダに改めて加入しないと接続できないことや
対応ソフトの少なさにより,サービス終了。しかし,モバイルでネット接続サービス
を運営していく障害や難しさを経験したと思われる。

■PS2期 →ゲームキューブ,XBOXなど
ニンテンドーDS
レボリューション?

上記の説明に偏りがややあるのはご容赦いただきたい。

1)まず,バーチャルボーイ,サテラビューに注目していただきたい。
これらは,次世代機の発売直前ということで,共に影が薄れた印象があった。
つまり外的要因である競合機の問題である。

2)次に,サテラビュー,64DD,モバイルGB,ニンテンドウパワー,
これらは手続きがややこしく,魅力的なソフトも少なかったため,ユーザーを遠ざける。
マーケティングが反映されていないという内的要因の問題である。

3)そして,引き際の問題。例えばバーチャルボーイ,64DD,モバイルGB,スコープは
失敗と決定した時点で,すぐに後続ソフトの発売やサービスをやめ,コストを抑えた

この中で成功した例としてディスクシステムを挙げたが,これは開発側やユーザーの
需要を反映して発売した。マーケティングと関連する。また,その時力を持っていなかった
競合機の問題は,捨象できた。そして,出荷がそこそこ好調だったため,持続して開発した

ニンテンドーDSはどうだろう。
マーケティングについて。
開発費の高騰問題で,アイディア勝負の開発を望んでいる開発者もいたが,
それより,魅力的なコンテンツを提示できたことが大きい。
そして,発売後の販促を何より重視した。
すなわち,ソフトを年齢等問わず,様々な人に初体験してもらう機会を設けた。
これらは,潜在的な需要を発掘したと言える。これは任天堂の発表どおりである。

競合機である,PSPの発売時期に比べて,一足早めに発売した。
外的要因を異質な製品の話題性によって制御することができた。

好調な出足を見て,主力ハードとして,ソフト開発を進めているのは言うまでもない事実である。

そのほか,既存ハードを維持しようとしたニンテンドウパワーやサテラビューは失敗したが
ゲームボーイアドバンスは,低迷せずにSPやミクロの話題性で切り抜けた。
これは,ゲームボーイ20周年やマリオ20周年でブランド作りをしたことが関係している。

なるほど,確かに,成功要因を多く含んでいる。
今回特に注目すべきは,競合機を抑えることに成功したという事実と
発売後のマーケティング,フィードバック,そして主力ハードへの位置づけ,と
チャレンジ製品でありながら,チャレンジとは思えないコストを投じていることにある。

つまり,今までのチャレンジ製品は,チャレンジであるが故に,
それなりのマーケティングや販促や開発しか行わなかった経緯があったが,
DSは,次世代機とも競合機とも重ならない時期であったために
任天堂全体としてDSに注力できたことと,話題性が集まったこと,
そして,注力できたことにより,チャンスを逃さず投入でき,フィードバックも活かせた。

この教訓は,次のようなことではないか。
新しいゲーム需要を掘り起こすというポリシーのもとに,
任天堂全体がチャレンジ製品に注力することで,チャレンジ企業となる
そのことが,製品を生かすために重要なポイントなのではないか。
山内氏の,面白いものを作ればユーザーはついてくる,というのは間違いではない。
しかし,面白いものを作るためには,本気でやらなければならないのも事実だ。

任天堂のコアコンピタンスは,もともと「面白い変わったおもちゃ」を作ることだと思う。
「面白い変わったおもちゃ」=チャレンジ製品なのではないか。
このコンピタンスにしたがっていないゲームキューブは,会社全体で取り組んだが,
成功したとは言えない。ニンテンドウ64も,簡単にマネされることをやったという意味では
変わったおもちゃを作ったとは言えないだろう。
DSのような,一見,成功するかな?と思われるようなハードは誰もマネをしない。
そのようなチャレンジ製品のマネをするのはリスクが高いからだ。
かといって,保守的になってチャレンジに消極的にしか投資しないのは
大企業になった任天堂の負の部分だったと思う。

その負の部分を払拭し,チャレンジ製品に会社全体で注力するポリシーを
はっきりと身につけた今は,選択と集中が終わった,リストラ後の企業のようである。
それは次世代機のレボリューションのコントローラを変な形にしたことにも表れている。
会社全体で注力して失敗したらどうするつもりなのか?
そこは,運を天に任せる企業なのだから,どんどんチャレンジしてもらいたいと思う。

参考URL
#ゲーム機発売年表 (鷹月ぐみな情報局)
#任天堂 - Wikipedia (Wikipedia)
posted by Madick at 01:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 経営・組織論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月16日

任天堂をとりまく変化

さっき、ざーっと昔に作ったサイトの残骸なんかを見てきたのですが
なかなか恥ずかしいものです。

思えば、私の20年ちょいは、経済の大きな変動の時代でありながら
任天堂が世に出て、その首位を奪われるといった変動の時代でありました。

すなわち、「バブル」から、「失われた10年」という変化に沿うようにして
「ファミコンの登場」から、「任天堂ハードの低迷」という変化が起こったと思うのです。

誰もが資産に余裕を持つ時代には、「エレクトロニクスでの娯楽」という
やや高級な分野に、消費者もビジネスも傾倒することができたのです。
ファミコンとはそういうものだったのでしょう。

任天堂の姿勢は、ほとんど変わっていません。
今も無借金経営だし、遊びに対する考え方も、そうです。
経営体制がやや変わって、少し組織が大きくなったということがありますが、ごく微小な変化でしょう。

しかし、時代は変わったのです。
デフレ経済下では、高級な娯楽よりは、安価で確実な娯楽が求められるはずですから
ここに、ROMカートリッジ問題やロイヤリティ問題が関係すると思うのです。
ゲームソフト単価を下げるための努力をソニーはしたと思います。
当然、新規参入なので、価格競争で勝つことを考えるのは普通です。

山内氏は、「面白いものを作ればユーザーはついてくる」旨のことを言っていましたが
それはすなわち、資産に余裕のある時代の話。

ゲームソフトはじめコンテンツ産業の特徴の一つに、
プレイしないと面白いかどうかわからないことが挙げられます。
これは、すなわち、安価でないと少ししか売れないから
面白いことが分かる人がいないことを意味するはずです。
クチコミなどで広がるためには、多くのユーザーがプレイすることが必要ですから
結局のところ、面白くてもゲームは売れなくなる。

だって、外見が同じように見えるもので、例えばRPGとRPGと比べて
一方が(面白い)RPGでもう一方が(普通の)RPGだとしても、それはわからない。
安価な方は比較的プレイヤーが多いはずなので、(普通の)RPGが安価なら
そっちの内容ばかりが周囲に伝わる。
二者択一で比較対象がなければそれは面白いRPGになるんじゃないでしょうか。

もちろんブランドで固められたゲームに価格はあまり関係ないです。
例えばマリオカートなんかは、ハードが64でもまぁまぁ売れたし。
だけど、無名のサードパーティ製のは、圧倒的にコケたはずです。
64のサードパーティは多くが、新参者でしたし。
あれは、64への参入をいくつかのメーカーが躊躇したからでしょう。

原因はこういうことだけじゃないんですが、経済変化に合わせて考えた場合
任天堂が首位を奪還された要因はこういうことに見出せるはずです。

変化に対応できなかった、そういう大手電機メーカーなどは、経営の再設計を余儀なくされました。
任天堂は、財務的に優良なので、表面化はしませんでしたが
変化に対応しきれなかった会社の一つとして挙げられると考えていいはずです。

現在の経営陣のいいところは、変化への対応力を持っていることです。
悪く言えば、古くからの良き伝統を失いつつあることにもなるのですが、
前者の言い方では、経営の方向性に関して柔軟性を持っていて将来性があり、
後者の言い方では、コンテンツにおいて他社との差別化を図りにくくなっています。

任天堂が首位に返り咲くことがあるのか。
これは、今動き出した任天堂の10年ほど先にやっと結果として現れるのだと思います。
posted by Madick at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営・組織論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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